このコーナーは、オリエンタル福多が仕事で作ったPCについて、発表媒体でフォローしきれなかった部分を見せてしまう!というものです。

ラジカセPC
「PC-DIY」誌 03年10月号「ビストロDIY」
Photo Clik! LargeSize


 このPCは、キルタイムコミュニケーション発行の月刊誌「PC-DIY」の人気コーナー「ビストロDIY」に参加するために作ったものです。「ビストロDIY」は03年8月号より「ビストロトーナメント」という企画が開催されており、ワタクシは予選C組での参加となりました。
 本誌でも書きましたが、そもそもワタクシは姉妹誌で、マジメな記事を掲載していたわけですが、担当編集から「PC-DIYのビストロDIYに出ませんか」というメールをもらい、軽い気持ちで了承してしまったのです。そしたらトーナメントだったなんて…。トーナメント開催の誌面を見るまで知りませんでした。思えば、トーナメント開催の前の号(7月号)に予告記事があり、新参入ライターがある旨記載されていたのですが…、まさかそれが自分だとは思っていなかったのです。

 「ビストロトーナメント」予選C組に与えられたテーマは「ユビキタス(モバイル)」とのこと。まあ、マジメなライターを装っている状態のオイラならば「ノートパソコン買えばいいじゃん」ということになるわけですが、それだとお話が進まないので、考えた末に「ラジカセにPCを詰め込む」ということにしました。トランスポータブル(可搬性)はユビキタスの第一歩です。(メーカーは、それを20年以上も前に実現しているわけですが)
 ここでは、本誌では掲載できなかった「ラジカセPC」の細部写真を中心に見てもらうことにしましょう。

製作期間:03/07/24〜03/08/04(締め切り破り…)


ラジカセ

 土台となるラジカセは、「ハードオフ」のジャンクコーナーで購入したビクターのラジカセです。不動品ですが、この時点では「ラジオ」も「カセットデッキ」付いていて、確かに「ラジカセ」です。CDプレイヤーは3連装のもの。当初の予定では、トレー式のシングルCDプレイヤー搭載のラジカセをゲットして、パソコン用光学ディスクドライブのベゼルを外して、ラジカセのベゼルをそのまま利用するつもりでした。しかし、そうそう都合のよいジャンクラジカセが入手できず、光学ディスクドライブのベゼルを露出させて使うことになりました。
 ラジカセをバラしてみると、スピーカーユニットは中低音用と思われるミッドバスと高音用のツィーターの2Way構成。バスレフポート装備のようです。防振対策は一切なし。まあ、ラジカセなんてそんなもんでしょう。左ユニット(写真では右側)のところに付いている黒い部品は、ラジカセ自体に装備されているスピーカーコードのコネクタ。クロスオーバーネットワークはラジカセの制御基板のアンプ周辺に実装されているようです。
 この時点で戸惑ったのは、スピーカーのエンクロージャー空間が、メカ搭載部から明確に仕切られていること。PC関連のメカはラジカセのセンター部分に集中搭載するしかなく、かつ光学ディスクドライブを納める部分の位置が、けっこう高いことです。かさばる光学ディスクドライブが、狭いメカ搭載空間の中央にデンッと居すわるため、他の部品の配置に苦労することになります。


ドライブマウント

 ガラエポとアルミL字アングル材で作った、ドライブマウントです。ドライブ類の取り外し、交換を可能とするために、正規のネジ穴を使って固定しています。光学ディスクドライブを固定しているアングル材がガラエポに直接ネジ止めされているように見えますが、埋め込みナットを使っています。
 ドライブマウントにHDDを固定してから、ドライブマウントをラジカセのガワに固定します。
 マウントの前側は、ラジカセのガワのCDベゼル裏側補強リブにネジ止め(ナットは埋め込みナット使用)、ドライブマウントの後ろ側はネジ切りパイプ(黒ジュラコン製、アキバの「ネジの西川」で購入できるやつ)を長さ合わせして、ラジカセのガワの床面から固定します。
 マウントが固定できたら、光学ディスクドライブをマウントにネジ止めします。光学ディスクドライブにL字アングルを先に付けておくのがポイント。
 ラジカセの側の正面は、光学ディスクドライブが露出できるようにサイズ合わせをしながらカットしてあります。


電源

 本誌で詳しく触れられなかったものが、この電源です。モノはキューブ型ベアボーンの「CUBE25」に搭載されているものを、そのまま使っています。電源ユニットを固定するためのネジ穴は、電源の底面(CUBE25で固定に使っている穴)以外に、コンセント側と、コンセントの反対側にインチネジの穴が開いています。
 この電源の特徴は、そのサイズ。やっぱり小さいですね。このサイズの電源は基本的に一般売りされていませんが、同サイズと思われるP4用ATX12Vコネクタ付き200Wのものが、アキバの「COM3」で入手できる(03年8月現在)ようです。つまり、P4用の電源と、P4用Mi ni-ITXのマザーボードを入手すると、CPUクーラーの高ささえ工夫すれば、このラジカセPCはP4化することも可能なのです。
 電源を含み、ラジカセのガワの後部に各部品をマウントしたところです。
 電源をマウントするのは、サイズ的にこの部分しかありません。むろん電源ユニットを押し込むために、筐体の補強リブのいくつかはカットしてあります。電源ユニットの固定はラジカセ中央部のリブを使ってネジ止めしています。ネジでの固定は片側だけ。それだけでも実用に無理はないと思いますが、電源がブレるといやなので、反対側は下からつっかえ棒を出して支えています。この棒はラジコンのボディマウントですね。廃品利用です。
 電源ユニットのコンセント側がラジカセの左側奥になるのですが、電源ユニットのこの部分には冷却ファンがあります。このファンにフレッシュエアーを入れるため、当該部分には6ミリの穴を十数カ所円形配置で開けてあります。この電源、ワタクシの経験から言って熱に弱い傾向があるので、フレッシュエアーの導きは重要です。ただし、その点では、他の熱源であるCPUやHDDと電源を納めている部分が隔壁で遮られているのは、CUBE25より有利かもしれません。


マザーボード

 マザーボードは、CUBE25から外した「FV25」(Shuttle製)です。マザーボード自体には手を加えず、そのまま使っています。フロントUSBのケーブルが出ているのですが、それをマザーボード脇に設置してキーボードとトラックボールの接続に使いました。フロント出しのマイク入力やイヤホン出力は無視しています。CPUクーラーはCUBE25に標準添付のものです。
 このマザーボードのサイズは独自規格なので、マウント穴の位置もMini-ITXとは異なります。そこがちょっと残念ですね。マウント位置がMini-ITXに準拠していて、バックパネルも存在すれば、それ用にマウントを作ることで、EPIA等のマザーボードとボルトオンで交換できる仕様にすることができたのに…。
 インターフェイスとしてTV-Outが付いていますが、これがワタクシを悪の道に引きずり込んだ元凶です。
 で、これがマザーボードのマウントプレートです。単なるガラエポから切り出した板の組み合わせですね。ラジ屋にとってはたいした仕事ではないです。(むろん加工時間はかかるけど…カーボンでやるよりラクだよね。)
 インターフェイスバネルは、実際に使う寸法より大きめに切り出しておいて、ラジカセのガワに突っ込んでから、必要部分を残して切り落としています。現物合わせですね。CUBE25にインターフェイスパネル用のシールが付属しており、それを貼る前提でカットしていますから、穴の仕上げはけっこう汚いです。(シールを貼ると、穴の周囲が隠れるから)
 ラジカセのガワへの固定は、インターフェイスパネルの3箇所の穴(下側2箇所、上側1箇所)で行います。下の穴はラジカセのガワの筐体に直接埋め込みナットを設置しましたが、上側はスリット部に重なっていて、ラジカセのガワの筐体に平面がありません。仕方がないで、5ミリ厚のポリカ板からネジ穴を開けたウケを作って設置してあります。ラジ屋としてのワタクシとしては、このポリカの部品はフライス盤で削りしたかった(ラジの部品ならそうする)のですが、初登場のPC誌でフライス盤はエゲツなかろうという自主規制のもと、糸鋸、ピラニアソー、ヤスリでの加工にとどめています。フライス加工を封印するかは、次回のテーマ次第です…


アンプ

 アンプはワンダーキットです。モノラル分で700円。ボリュームはモノラル用が付属していますが、左右独立調整は面倒なので、2連ボリュームを買いました。液晶モニタの手前に生えているツマミがアンプの音量調整です。
 別に組み立ては難しくないですねぇ…。子どものころにアンプを作ったときには、電源をどうするか…で悩んだわけですが(うなずいてる人いるでしょ(笑)トランス+12V整流回路は子どもには高価だしね)PCにはDC12Vを出力している端子がゴロゴロしているわけですから、どこからでも引っ張ってこれます。
 で、ワタクシはドライブ用のコネクタの12Vから電力供給したわけですが、別にCPUファンの電源(つまりマザーボード上)から取っても構わないと思います。消費電力的には、ちとツライかな?
 本誌にも書きましたが、結局電源回りからのノイズをクラって、けっこう大変でした。写真はノイズ対策後ですが、この状態でもHDDの回転時とマウス操作時に若干ノイズが乗ります。
 スピーカー出力のコネクタは、ラジカセの純正品です。メイン基板に付いていたものを基板ごと切り出して使いました。スピーカーユニット側のコネクタも純正をそのまま使ったので、接続はバッチリです。
 ラジカセのガワへの固定は、ラジカセの電源が入っていたスペースの奥にネジ止めです。
 このスペースには、アンプ用のDCコネクタと、テレビモニタ用のAC100Vコンセントを引き込んであります。
 アンプにノイズが乗るのは、PC内蔵アンプの宿命ですね。市販品としては5インチベイ内蔵スピーカーの「SP-500」はノイズ乗りがなくて愛用しています。このSP-500のノイズ対策を研究しようと思っています。


(問題の)液晶テレビモニタ

 秋月電子で売っている5.4インチ液晶モニタのキットです。モニタ本体とRGBユニット、モニタバネルを駆動させる5Vの安定化回路を含む12V電源がセットになったものです。真ん中にある3端子レギレータとコンデンサ2個が5V安定化電源回路ですね。ボリュームは、液晶バックライトの調整用です。
 基板完成品なので、組み立て自体は簡単(配線は細かいし、電源や信号インピーダンスの設定のための配線を行う必要はあるけど)です。
 とはいうものの、CATVのチューナーに繋いだら画質的には「うーん…」なものでした。ワタクシの配線が悪かったのでしょうか…。
 ラジカセへの組み込みで問題なのは、液晶パネル裏側がむき出しなこと。今回はガラエポでフタを作りましたが、もっと加工がラクな素材で作ったほうがよいでしょう。穴位置があえばパンチングアルミもいいかもしれません。
 RGBユニットのラジカセのガワへの固定も、ちょっと苦労しました。アンプの手前にネジ止め固定する方法もあったと思いますが、加工が複雑になりそうだったので、このスペースの天井に強力両面テープで貼り付けました。ただ、この位置だとコントラストとか色合いの調整ができません。トリマが基板実装されているのです。
 モニタユニットは、ユニット外側に出ているペロのうち、下側のもののみを使って8ミリアルミ角材を固定。そのアルミ角材の両端にネジ穴を切ってあります。ラジカセ外側にはアルミL字アングル材と、2ミリ厚のアルミ平板材から切り出したステーを設置。モニタ下のアルミ角材のマウントとネジ止めしました。前方、後方に倒すことが可能となっています。
 本誌記事のように、このモニタは完全に飾りとなってしまいました。RGBユニットのインピーダンスを調整すれば、マザーボードのTV-Outを受けつけてくれるのではないか…、というのが今残された最後の手段です。

 実際、これに代わる小さいモニタを探すのは不毛なようです。14インチ〜15インチの液晶PCモニタが中古で1万円程度に入手できるのですから、それらをかっこよくマウントする方法を考えたほうがいいかもしれませんね。ラジカセ裏に収納しておいて、上側に引き出して使うとかね。予算があればアキバで売ってる10インチのTFTモニタをマウントしたいなぁ。実売価格で5万6千円ぐらいするけど。


キーボード
 エレコム製のミニキーボードです。さすがに10キーは付いていませんが、この状態で横幅222ミリです。このケースを取っ外すと、中身はまんまノートパソコン用ですね。
 ラジカセ上部に、このキーボードを取り付けたわけですが、近年のラジカセは最上部がクラムシェルタイプのCDプレーヤーになっているものが多く、そのCDプレーヤーのすぐ脇にラジカセ運搬用の把手があるので、把手の間に222ミリ幅のキーボードを取り付けることもできません。上部がダブルカセットの機種だと把手間のサイズに余裕があります。
 キーボードをキッチリとラジカセのガワに埋め込むのがベストな方法かどうかは不明です。ガラエポの平板を切り出して、その上に無加工のキーボードを強力両面テープで固定したほうがいいのかもしれません。そのほうが故障率も下がるはずだし。加工したがるのはワタクシの癖とともいえるでしょう。
 ガラエポのプレートにマウントしたところです。外側に見えるのは、キーボードを上部から押さえる枠で、実際にはキーボードは下側のもう一枚のガラエポに両面テープで固定されています。キーボードの左右に見える黒い丸は黒のM3皿ビスです。このビスとスペーサーでキーボード基板の厚みを作り、下のプレートに固定されているわけです。
 枠の上部3つの穴の下には「Num Lock」「Caps Lock」「Scroll Lock」のLEDがあります。プレートを黒く塗ったあとに、元々のキーボードのケースから剥がしたインジケータ用シールを貼ってます。


組み込み

 各部品の組み込みです。それぞれネジ止め等の方法で組み上げられるように出来ているので、順番に組み込んでいけば完成です。(当たり前か…)
 マザーボードは、ラジカセ裏側の大穴から突っ込んで、背面のネジを締めれば固定されます。キーボードプレートもラジカセの上に乗っけてネジ止めするだけ。軽メンテのためにユーザーが取り外す可能性がある部分のネジはローレットにして、手で回せるようにしました。他の部分も分解自体は難しくないですけどね。
 この写真だと、キーボードプレートの裏側が見えますね。むき出しの基板は、LEDやキーボード制御用の回路です。
 苦労したのは、ラジカセ上部前側のパンチングメタルです。当初はプラバンを曲げ加工してラジカセのフチととツライチにしようと思っていたのですが、通風も考えないといけないし…ということでパンチングになりました。が、これも固定方法で悩みました。やっぱりツライチにこだわって、パンチングにモールを巻いて裏側から固定しようかな…とか思ってたんですけど、仕上がりがキレイになりそうもないので、ガワの裏側に直接パンチングをネジ止めして、アールは指でギュウギュウ押して成形しました。かなりアクセントになっています。(出渕っぽいデザインかもしれない…)
 アンプやRGBユニットを納めた部分のフタに付いてるスイッチは、モニタの電源です。そもそも、このモニタはオマケ的要素が強いものなので不要時に電源が切れるようにしてあるのです。モニターが完調ならば、画質は悪くても動画ファイルの全画面表示が単体で鑑賞できるし、単体でWindowsが起動できれば、少なくともCDプレーヤーにはなる…という目算だったのですが…。結果は本誌報告の通りです。
 本体部分に関して、欲を言えば光学ディスクドライブをノートパソコン用の薄型のものにして、マザーボードの取り付け位置が下げられれば、PCIバスにカードを増設(ドーターカードでPCIカードを横向きにつける仕様)できたことです。PCカードスロットをつけて無線LAN化できたのに。無線LAN化したい場合にはUSBで802.11bのアダプタつけるしかないですね。このマザーボードはUSB2.0じゃないし、USB2.0のインターフェイスをつけることもできないし。
 ちなみに、ラジカセ正面の白い楕円形がメインスイッチです。その脇がパワーとHDDのLED。さらに脇の汚いカタマリがリセットスイッチです。汚いカタマリは誤操作防止のためのパイプ型ガードを固定するのにホットポンドを使ったから。ラジカセ正面のフェイス部分はABSなので、マトモな接着剤が効かないのです。
 ラジカセの制御系を取っ払ったために、開いたLCDインジケータ部分等は黒く塗ったプラバンでふさいでます。光学ディスクドライブ脇の空間はパンチングで塞ぎました。通風いいしね。  光学ディスクドライブのベゼルとかトラックボールとかガラエポの塗装はタミヤのプラモデル用缶スプレー「セミグロスブラック」、筆塗りしたところはグンゼのMr.カラーの「セミグロスプラック」とド定番コンビです。ガラエポの塗装はタミヤの「ポリカスプレー」のほうが食いがいいです。(今回は手持ちがなかった)


総括

 本誌掲載時のネーミングは「ラジカセPC」ですが、ラジオもついてないし、カセットもついてません。光学ディスクドライプがDVD-ROMドライブなので、音楽CDとDVDビデオは見れます。
 市場にあるベアボーンには、PCの電源を入れない状態でも光学ディスクドライブとアンプにだけ通電して、CDプレーヤーになる製品がありますね。早くそれに気がついていれば電源と切り替え回路を組むことで、単独でCDプレーヤーにすることができたのに。まあ、作業時間が足りなかったと思いますけど。

  スペック
CPU Celeron 1.4GHz
メモリ PC133 SDR-SDRAM 256MB
HDD 80GBプラッタ 7200rpm 80GB


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